blog シン・ヒビノコト
幻の美術館
今年は「行きたいけど一生行くことはないかもな」と
思っていた二つの美術館に行くことができた年だった。
行きたいけど行かない理由、それはアクセスの不便さ。
(あくまで奈良県在住の身からしたら)
そしてそのアクセスの悪さを乗り越えれるほど、
規模が大きくなく、周囲に観光するものが集まっているわけでもないから。
美術館巡りをなんとなく趣味にしてはいるが、
そんなわけで個人的に「幻の美術館」となりつつあったのが、
「熊野古道なかへち美術館」と「奈義町現代美術館」。
なかへち美術館は、和歌山県の熊野古道中辺路の近露近くにある公立美術館。
旧中辺路町立美術館として開館し、2005年からは市町村の合併により、田辺市立美術館の分館となっている。
この公立のけして大きくはない美術館に行きたい理由、
それはなんといってもこの美術館を作ったのが
建築家ユニット「妹島和世+西沢立衛/SANAA」だから。
しかもSANAAが最初に手がけた美術館なのだ。
特に建築に詳しくない私でも知っているSANAAの作った小さな美しい美術館。
初めて知った時からいつか行きたいと思いつつ、
公共の交通機関で行こうとすると最寄りの駅からバスで約1時間…。
これはけっこうきつい。
そんなわけで行くのを後回しにしていたのだが、
今年の春の終わり、十津川村にある瀞ホテルに行った時、
「あれ、これって案外美術館の近くなんじゃない?」と思いつき、
急遽寄り道することになったのだ。
ちなみに奈良県民以外の方は想像しにくいと思うが、
奈良県の十津川村は奈良の最南端に位置する村で、
そこにある風光明媚な峡谷「瀞峡」に行くには、ナナツモリからだと約3時間以上かかる。
瀞ホテルは瀞峡にある元ホテルを使用したかわいい食堂&喫茶。
さて、そんなこんなで突然夢叶い訪れたなかへち美術館。
深い山々に囲まれ、川のせせらぎと鳥の鳴き声響くのどかな地に
突如現れるガラス張りの建物。
想像より大きくて、1998年に建てられたとは思えない今っぽさ。
展示室を囲むように回廊があり、裏側に休憩コーナーがある。
休憩コーナーには黄・緑・紫・水色と絶妙なカラーリングの丸い椅子が並べてあり、
光が一面に注いでいる。
窓の外はまるで外国のような小さな川と緑の絨毯。
これはいい。こんないい美術館があるなんて、なんていい町なんだ。
しかもラッキーなことにこの時の展示は 鈴木理策の写真展。
私は鈴木理策が好きだ。
なんてったって写真が圧倒的に美しい。
その美しい写真を美しい美術館で見れる幸せ。
展示室自体は一つだし、大きいわけでもない。
でもここだけにしかない何かが確かにあって、
それこそが美術館の醍醐味だと思う。
美術館巡りのもう一つの楽しみである
「美術館でワインを飲む」ができないのが残念なところではあるが、
十分行く価値のある美術館だった。
皆様もぜひ熊野古道観光をお考えならルートの一つにご検討を。
長くなったのでもう一つの「奈義町現代美術館」についてはまた後日。