blog シン・ヒビノコト
続・幻の美術館
「行きたいけど一生行くことはないかもな」と
思っていた二つの美術館のお話、後半戦。
日にちは空いてしまいましたが、昨年行けた「奈義町現代美術館」のこと。
岡山県勝田郡奈義町にあるこちらの美術館。
Casaの「日本の美術館ベスト100ガイド」などにも掲載されているのですが、
私はたまたまwebで見つけたのがここを知ったはじまり。
NAGI MOCAという通称と不思議な建物の写真がドンと出てくるオフィシャルサイト。
町の美術館で、現代アート?
とハテナな頭でサイトを見ていくと、そこには荒川修作+マドリン・ギンズの名前が。
養老天命反転地でおなじみ荒川修作さんのことはけっこう好きなのに、
ここの存在を全く知りませんでした。お恥ずかしい。
よくよく見ていくと、奈義町現代美術館は世界的な建築家磯崎新氏プロデュースの美術館で、
国際的なアーティスト、荒川修作+マドリン・ギンズ、宮脇愛子、岡崎和郎の巨大作品を
空間ごと永久展示することを目的とした美術館だそうです。
というわけで基本的には常設作品=美術館そのものというような、ちょっと不思議な美術館。
これはぜひ見てみたい!
でも遠い。
というか失礼ながら、そもそも奈義町がどこかがわからない。
調べてみると岡山県の上の方、津山市から近い町だと判明。
判明はしたけど、あれこれ頭でシミュレーションした結果、
「まあ、いつか行けたらいっか」に落ち着いたため、見事「幻の美術館」入り決定。
そんなわけでしたが、昨年これまた念願だった鳥取の「植田正治写真美術館」からの帰り道、
ふと「あれ?これって意外に近くを通るんじゃ」というわけで、
急遽寄り道を決め、これまた予想外に訪問することができたのです。
さて、そんなわけで訪れた美術館でしたが、まずは美術館のある奈義町の美しさにホレボレ。
秀峰・那岐山のふもと、一本の美しく舗装された道が気持ちよく伸び、
その両脇に美術館を含めたいくつかの文化施設が立ち並びます。
美術館前の芝生はきれいに手入れが行き届いており、
そこにそびえ立つ荒川修作+マドリン・ギンズの作品がある「太陽」と名付けられた
筒のような建物が青空の中独特の存在感を放ち、
ここを見ただけでこの町の何か心意気のようなものを感じました。
蛇足ですが、美術館閲覧後、隣の奈義町観光案内所に立ち寄ると、
職員の方がとても丁寧にいろいろなことを教えてくださいました。
美術館の成り立ちや奈義町のこと。
奈義町は若者の定住や子育てに力を入れているようで、
特に子育てするための支援がとても手厚いそうです。
出生率も全国トップクラスだとか。
確かにこんなに素敵な場所があるのんびりしたところでの
子育てはとても楽しいだろうなと思います。
さて、風景とそこにとけ込む美術館の外観を堪能した後はいよいよ中へ。
全体的にはコンクリート打ちっぱなしの近代的な建物。
受付のお姉さんもとても感じがよく、期待は高まるばかりです。
まずは宮脇愛子さんの作品展示がしてある「大地」。
水の上、そして黒い石の上にステンレスのワイヤーが張り巡らされる中庭と部屋。
中庭では風の振動でワイヤーが揺れ水面も揺れる。
黒い石が敷き詰められた部屋は、賽の河原のようでどこか怖い感じもする。
感じたことは多々あるがそこは割愛。
その先に進むと岡崎和郎さんの作品「月」の部屋。
三日月方の大きな部屋の中は真っ白で、
壁には3体の黄金色のHISASHIが取り付けられている。
声が不思議な反響をする空間。
最後は待ってましたの荒川修作+マドリン・ギンズの作品「太陽」。
外から見た円筒は、中に入ってもそのまんま円筒。
円筒に入る前にこの作品が出来上がる行程のデッサンなどが見られるが、
正直言って理解するのはとても困難。
円筒の中は左右に京都の龍安寺そっくりの石庭が、対象に置かれている。
床には曲面のベンチ、斜めに置かれたシーソー、鉄棒。
そして天井にはそれらと対応する、大きめに作られた全く同じセット。
正直言ってあんまり長い時間いると気分が悪くなる。いろいろ不安になる。
でもこの感覚を味合わせてくれるから私は荒川修作が好きなのだ。
と、ここまで書いて思ったけど、この美術館は実際に行って、
その空間に立って感じないとわからないことばかり。
なのでこのレポートにあまり意味はない感じがします。
とにかくいろいろショックな体験をした後は、美術館のなかにある町立の図書館もちらっと拝見。
ここもとにかく素敵で、自分が小さい頃こんなところがあったらと悔しくなりました。
結論として、この美術館にはたとえ展示しているものが同じでも
(あ、ちなみに常設以外の展示も展示室で行われてる時もあります)
いつかまた行きたいなと思うくらい素敵な美術館でした。
何より、今から20年も前に、まだアートアートって騒がれる前に、
現代アートの美術館を建てたっていう事実がものすごいことですよね。
そういう意味でもいろんな刺激を来るたびに受けることができそうな場所です。
皆様もぜひ足を運んでみてくださいね〜。
幻の美術館、おわり。